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ワンヘルスの実践:北米の大学群におけるワンヘルス・リーダーシップの強化

2026.8.31

 WOAHがホームページ上に掲載しているワンヘルスに関する北米の大学群のケーススタディについてご紹介いたします。
 ※WOAH(国際獣疫事務局:World Organisation for Animal Health)は、世界各国と協力して動物の病気を防ぎ、動物と人の健康を守るとともに、人・動物・環境の健康を一体的に考えるワンヘルスの取組を積極的に推進している国際機関です。
 

掲載URL:https://www.woah.org/en/document/one-health-in-action-naohun-strengthening-one-health-leadership-across-north-americas-universities/

【無断転載・利用禁止】
本ページに掲載している内容は、著作権その他の権利者であるWOAHの許諾を得て掲載しています。許可なく、複製・転載・改変・配布・二次利用等を行うことを禁止します。

one-health-case-study-naohunダウンロード

<参考> 内容を日本語に仮訳したものを以下に掲載します。

タイトル:「ワンヘルスの実践:北米の大学群におけるワンヘルス・リーダーシップの強化」


課題の概要とワンヘルスの背景

 北米の大学やカレッジでは、数多くのワンヘルスに関する取組やプログラムが実施されている。これらのプログラムの相乗効果を高めるためには、ワンヘルスに関する研究、教育、アドボカシー(政策提言・啓発)、及びサービスの各セッションを横断的に連携させることができるかどうかが課題になる。
 こうした背景を受け、「北米ワンヘルス大学ネットワーク(North American One Health University Network:NAOHUN)」は設立された。NAOHUNは、感染症の脅威、環境災害、薬剤耐性(AMR)など、北米地域が共通して直面する社会的課題の解決を目指す組織である。NAOHUNは、カナダ、メキシコ、米国の北米各国の大学が行う活動を相互に連携させ、協働を強化し、コミュニケーションを最適化するとともに、人、動物、植物、そしてそれらが共有する生態系の健康を促進する活動のインパクトを拡大することを目指している。
 NAOHUNは、運営委員会によって組織され、以下の4つの主要分野に重点を置いている。

①アドボカシーとアウトリーチ(Advocacy & Outreach)
②研究(Research)
③教育(Education)
④サービス(Service)



解決策とリスク軽減のための戦略

 ワンヘルスという概念は、人、動物、植物、環境の健康が相互につながっていることを認識し、分野横断的・セクター横断的な協働とコミュニケーションを促進するグローバルな枠組みである。過去数十年の間に、ワンヘルスは、統合的な解決策を必要とする複雑な地球規模の問題に取り組むための主要なアプローチとして発展してきた。
 北米各地の複数の組織や大学が、ワンヘルス・アプローチの実践を中心としたワンヘルス・プログラムを導入してている。また、世界レベルでは、世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)、国連環境計画(UNEP)、国際獣疫事務局(WOAH)の4機関で締結された「四者間合意(Quadripartite agreement)」においても、ワンヘルス・アプローチへの支持を明確に示している。
 少なくない大学が、カリキュラムや研究計画にワンヘルス・プログラムを組み込み、地域で生み出された知識を地域レベル、及び世界レベルでの応用へとつなげている。これらのプログラムは、地域、国内、そして世界全体の健康状態を改善するための世界水準の技術革新、人材育成、及び情報発信に重点を置いている。
 また、地域ごとに大学ネットワークを構築し、連携して統一的なワンヘルス・プログラムやネットワークを発展させる取組も進められてきた。例えば、東南アジア・ワンヘルス大学ネットワーク(SEAOHUN)、アフリカ・ワンヘルス大学ネットワーク(AFROHUN)、欧州ワンヘルス・ネットワーク(UEOHN)などが挙げられる。これらは、大学間の組織的・協調的なパートナーシップが持つ力を実証している。
 しかし、北米地域には、このような大学間のパートナーシップはこれまで存在していなかった。その状況が変わったのが2024年であり、この年に「北米ワンヘルス大学ネットワーク(NAOHUN)」が設立された。NAOHUNは、北米におけるワンヘルス活動を推進するとともに、四者間合意の目標達成に貢献することを目的としており、2025年、2026年に向けて、以下の目標を掲げている。

〇NAOHUNのミッションとビジョンを支えるガバナンス、事業計画を策定し、運営委員会のガイドラインを確立する
〇ネットワーク内部及び一般市民向けに教育リソースを作成・共有し、研究、教育、サービス、アドボカシーに関連する優先分野を定義する
〇ワンヘルスワーキンググループの重点分野と構成を精緻化し、NAOHUNの会議開催頻度及び運営に関するプロセスを確立する
〇国境を越えた連携を強化するための会員特典を確立する
〇資金調達の機会を拡大するため、ネットワーク全体での研究連携の新たな手法を考案する
〇アドボカシーのためのツール、ネットワーク内コミュニケーションのベストプラクティスを策定する
〇ミッションを支援するための民間資金調達の機会を追求する

 NAOHUNは、優先度の高いテーマ別研究分野に関連する教員を対象として、新たな資金獲得の機会を創出するための戦略を策定している。NAOHUNは今後、ワンヘルス共同行動計画(One Health Joint Plan of Action:OH JPA)に示された6つのアクショントラックに取り組み、ワンヘルス教育、研究、地域社会との連携のための国際的な拠点となることを目指している。さらに、学生や教員が、ワンヘルスに関わる国際機関、連邦政府・州政府機関、非政府組織(NGO)、産業界などと協働できる機会を提供することを目指している。



関係者

 NAOHUNは、米国、カナダ、メキシコを含む北米のすべての大学、または大学内の学部・学科に門戸を開いている。会員には、ワンヘルスの使命に取り組む60以上の機関と約350名の個人が名を連ねている。政府機関、専門団体、及び非政府組織と連携し、ワンヘルスを推進するために、北米の大学プログラムの多岐にわたる分野、学問領域、コミュニティを超えて結びつけるネットワークになることを目標に活動している。



影響と成果

 これまでに、NAOHUNはソーシャルプラットフォームを通じて60の大学から700人以上を集め、約150人が参加した対面会議を開催したほか、約200人が参加したオンライン会議を実施し、4つの活発なワーキンググループを立ち上げた。教育ワーキンググループは、ワンヘルス教育の能力要件に関するホワイトペーパーを策定中であり、サービスワーキンググループは、獣医学と公衆衛生サービスを統合した地域診療所のパイロット事業を進めている。また、加盟機関のプログラムやその成果を紹介する月例ウェビナーを企画・開始した。アドボカシー資料は加盟機関に配布されており、複数の大学が共同でワンヘルス研究資金の申請を行っている。
 同ネットワークは、ガバナンス、コミュニケーション・プラットフォーム、及び学生交換プログラムの基盤を築いた。また、以下のテーマに関するワーキンググループを擁する運営委員会を設立した。

1.研究:連携を促進するための大学間研究、及び研修を提唱するもの
2.教育:能力、研修形態、教育リソース共有の方法など、ワンヘルス教育に関する出版物を含むリソースの開発に焦点を当てたもの
3. サービス:動物と人間を対象としたワンヘルス・クリニックを通じた地域社会への貢献、緊急対応の円滑化、及び検査室の改善、国境を越えた活動を通じた診断等
4.アドボカシーとアウトリーチ:活動の優先順位付けを行い、一般向け啓発、地域社会との連携、政策立案、及び政府指導者へのアドボカシーのための資料を開発し、各ワーキンググループにおける取組を強化するもの

 本ネットワークの教育モジュールは、ネットワーク全体で数百名の大学院生、専門職課程の学生に活用される予定。2025年に開催されるバーチャル会議では、200名以上のワンヘルス専門家が参加し、ガバナンスと組織体制の強化、目標達成に向けた複数の広報・マーケティング資料の作成、そして社会的ニーズに対応するためにNAOHUNメンバー間で共有できる即戦力となるツールの提供が行われる。

【レーシー・ゴールドスタイン博士(コロラド州立大学ワンヘルス研究所所長)のコメント】
 「当ネットワークは、大学や協力パートナーの専門家たちを結集し、ワンヘルス・アプローチを通じて重要な課題に取り組み、地域社会のためにより健康な未来を築く上で重要な役割を果たすでしょう。」



実施上の課題

 主な課題としては、関与する機関の多様な価値観を包含した相互合意に基づくガバナンスの確立、ワーキンググループの活動やネットワークの目標を支えるための資金調達、連邦政府プログラムを通じた資金が近年減少していることなどが挙げられる。
 これらの課題を克服するため、ネットワークは、会員モデルや財務構造を支援するべく、専門職団体との連携や独立した法的モデルとの整合性を模索している。また、財団による慈善活動や、ネットワーク全体での政府資金調達活動を推進するための協働策についても検討を進めている。さらに、加盟機関からの支援やリソースを積極的に活用している。



得られた教訓

 このネットワークは、共通の関与の原則と価値観を通じて、様々な機関や個人をつなぎ合わせ、その使命の推進に成功してきた。つまり、包摂的なガバナンスとアクセスしやすい体制により、より幅広い参加と新たな関与が促進されてきた。私たちの共有する価値観は、加盟機関に対し、各地域での取組を拡大するための斬新な方法を提供してきた。
 こうした交流を通じて、ワンヘルス・アプローチを推進する上での共同行動の力、次世代のワンヘルス専門家を育成するための教育能力、そして地球が直面する課題を解決するためにワンヘルス・アプローチを取り入れるための協力体制を構築するべく国境を越えて取り組むことの価値について、認識がさらに深まった。



ワンヘルス共同行動計画(OH JPA)との関連性

 このケーススタディは、OH JPAが国・地域レベルでいかに包括的に実践されているかを示す極めて重要な事例である。具体的には、北米ワンヘルス大学ネットワーク(NAOHUN)の設立、活動は、OH JPAの3つの「パスウェイ」すべてと完全に整合している。さらに、持続可能な保健システムの構築(アクショントラック1)や流行リスクの低減(アクショントラック2)から、地方特有の感染症の管理(アクショントラック3)、食品安全の強化(アクショントラック4)、生態系の保全(アクショントラック5)、そして環境 (アクショントラック6)に至るまで、OH JPAの6つのアクショントラックすべてを推進している。
 本ネットワークが、人間、動物、植物、環境の各分野にわたる学術研究、専門教育、地域社会への奉仕、及び国境を越えたアドボカシーを連携させることで、北米地域全体にわたり統合的で強靭なシステムの構築において、ワンヘルスが重要な役割を持つことが強調されている。

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